【中国雑感コラム】 Vol.103「改正反スパイ法施行」

作者:TJCC日付:2023-09-27 13:35:30

【中国雑感コラム】 Vol.103「改正反スパイ法施行」

習近平指導部が国家の安全を重視する方針を示すなか、スパイ行為を取り締まる改正「反スパイ法」が7月1日に施行されました。スパイ行為の定義を「国の機密・情報を盗む行為」から「国の安全保障・利益に関連する資料の提供」「スパイ組織に身を寄せる行為」などに拡大、罪を立証できなくても、過料などの行政処分ができるように変わりました。スパイ行為の定義が拡大し、取締りのさらなる強化が懸念され、中国で事業を展開する企業や現地駐在員からは、どのような行為が対象になるのか等、警戒感が高まっています。

2014年に最初の「反スパイ法」が施行されて以降、日本人がスパイ行為に関わったなどとして、現在までに当局に少なくとも17人が拘束され、うち9人が実刑判決を受けています。今年3月には、大手製薬会社の日本人駐在員がスパイ活動に関わった疑いがあるとして北京で拘束された事件は、日本でも大きく報道されました。

日本政府が作成している「安全の手引き」によると、いかなる行為が規制されるかスパイ行為の定義が明らかではないが、軍事施設や国境管理の施設などを撮影したり、許可を得ないまま宗教活動を行ったりすると、拘束される可能性があると指摘しています。さらに、外国人による集会の開催は強く警戒されているほか、携帯電話やパソコンなどの通信機器の利用は注意が必要と呼びかけています。

また、国家安全やスパイ関連の事件に巻き込まれないために、国家公務員との交流は特に留意する必要があり、センシティブな政治や民族の会話はしない、センシティブな情報を発信しない等の注意が必要です。

本法律は在中外国人のみならず中国人にも同等に適用されるため、企業としては駐在員や出張者だけでなく、ローカル従業員(特に管理職)にも「国家安全」や「反スパイ法」関連の研修や、企業内部の関連事項のデータ管理制度や管理体制の整備が求められます。

とは言うものの、駐在員や出張者は過剰に反応する必要はなく、普段の生活、業務において基本的な「法律遵守」を徹底すれば、「反スパイ法」のみならず関連リスクに遭う可能性は低いと思われます。(NT)

TJCCコンサルティンググループ 田辺尚裕