「海南自由貿易港多機能自由貿易口座業務管理弁法」発表、サービス開始

作者:TJCC日付:2024-06-07 10:43:32

「海南自由貿易港多機能自由貿易口座業務管理弁法」発表、サービス開始

202443日に中国人民銀行海南省支店より「海南自由貿易港多機能自由貿易口座業務管理弁法」が正式発表され、202456日には10社の主要銀行(中国銀行海南省支店、中国工商銀行海南省支店、中国建設銀行海南省支店、中国農業銀行海南省支店、交通銀行海南省支店、中信銀行海口支店、浦発銀行海口支店、招商銀行海口支店、光大銀行海口支店、興業銀行海口支店)にてサービスが開始されました。また、平安銀行海口支店でもすでにシステムの対応が終わり、検収通過後、近いうちにサービスがスタートする予定です。今後は条件に満たす銀行であればすべて多機能自由貿易口座の業務試行参加申請が可能となり、システム対応が終わり次第、サービスを開始できることとなっています。

中国人民銀行海南省支店からは、今後中国人民銀行と国家外貨管理局の統一手配のもと、条件を満たす経営主体に多機能自由貿易口座の関連政策を活用してもらえるよう進めていくこと、加えて、「二線」を跨ぐ手続きにはマクロプルーデンシャル管理を実施し、最低リスクを確保しつつ、多機能自由貿易口座の健全かつ安定した発展を推進していくことが示されました。

海南自由貿易港の多機能自由貿易口座は、海南島と中国国外の間のボーダーを『一線』、海南島と中国国内の間のボーダーを『二線』として、「一線を跨ぐ処理を解放、二線を跨ぐ処理に越境管理、同一名義口座の二線を跨ぐ処理は制限実施」という原則で管理していくものとされました。

ここでいう「一線」とは、海南自由貿易港の多機能自由貿易口座と海外口座、オフショア口座(OSA口座)、非居住者機関口座(NRA口座)との間、および多機能自由貿易口座間の資金の振り替えを指し、「二線」とは前述した類の口座と中国国内居住者(機関および個人を含む)の人民元銀行決済口座との間の資金振り替えを指します。

海南自由貿易港において、多機能自由貿易口座を構築していくことは、貿易投資の自由化・利便化を促進する重要な取り組みとされていますが、その具体的な内容は以下のようになります。

①「一線」を跨ぐ資金の振り替えについては、法律に基づき自由に行うことができる。海南自由貿易港の多機能自由貿易口座と海外口座、OSA口座、NRA口座の間、及び多機能自由貿易口座の間の「一線」を跨ぐ資金の振り替えは、支払い指示に基づいて処理される。発表された管理弁法では、証券投資を除いて、海南自由貿易港内の登録機構が多機能自由貿易口座と海外口座を利用して行う資本項目下の業務は、投注差外債借り入れ、マクロプルーデンスクロスボーダー融資、海外への融資の限度額・承認の制限対象外だと明確に示された。

②「二線」を跨ぐ資金の振り替えについては、越境管理だとみなされる。海南自由貿易港の多機能自由貿易口座と中国国内居住者の同一名義以外の人民元銀行決済口座の間の振り替えは、税関が輸出入管理される貨物貿易に関連する資金の決算とみなすものだけに限定され、人民元を使用する必要がある。

③海南自由貿易港内の登録機構の多機能自由貿易口座と中国国内の同一名義の人民元銀行決済口座の間の振り替えは、「ネガティブリスト + 限度枠管理」の原則で制限実施する。ネガティブリストはまだ発表されていませんが、下記4つの制限については示されています。

(1)経営範囲外のもの、または国の法律法規で禁止されている支出に直接または間接的に使用してはいけない。

(2)別途規定がある場合を除いて、証券投資またはその他の投資理財に直接または間接的に使用してはいけない(リスク評価で2級を上回らない理財商品および構造性貯金は除外される)

(3)経営範囲の中で明確に許可されている場合を除いて、非関連企業への貸付に使用してはいけない。

(4)自社で用いる以外の不動産の建設、購入に使用してはいけない。

海南自由貿易港の多機能自由貿易口座の特徴をまとめると下記のようになります。

(1)多機能口座では原則として銀行が顧客指示に基づき支払い/受け取りの処理が可能。

(2)外債借り入れ枠が投注差や純資産係数による制限を受けない。

(3)多機能口座と中国国内の振り替えは人民元でのみ行われる。

(4)同一名義口座間での資金移動は、業務の真実性原則に基づいて処理される(ネガティブリスト管理対照のものは除く)。

全体的に海南自由貿易港の多機能自由貿易口座体系は、高水準の対外開放を推進し、海南自由貿易港の発展を支援するという利点があり、必要なリスク管理措置も採られていて、最低リスクも確保されています。次のステップとして、中国人民銀行海南省支店が、中国人民銀行と国家外貨管理局の統一手配のもと、条件を満たす経営主体に多機能自由貿易口座の関連政策を活用するよう指導を進め、「二線」を跨ぐ処理に対するマクロプルーデンシャル管理を実施し、最低リスクを確保しながら、多機能自由貿易口座の健全かつ安定した発展を推進していくこととなります。