通関貿易ー特許使用料と技術サービス費:税関による「取引実質に基づく課税」を紐解く
作者:TJCC日付:2026-09-01 15:44:00
中国では税関による特許権使用料に対する専門査察の強化が進められてきましたが、現在ではより制度的に、そして常態的に行われるようになっています。
多くの外資系製造企業が、毎年、国外の関連会社に対して各種技術費用を支払っていますが、税務登録および対外送金手続きを行っているだけで、税関への輸入課税価格申告に反映させていない企業も少なくありません。
税関がビッグデータを活用したリスク調査体制の整備を進めるなかで、このような処理方法を行っていると、追徴課税、延滞金の追及、企業信用ランクの降格を招きやすく、企業の輸出入コンプライアンス管理においてリスクが頻発する要因となってしまいます。
このリスクが発生している最大の原因は、企業が「特許権使用料」と純粋な「技術サービス費」について、税関から課税されるかどうかの境界線を正確に区分できていないことにあります。そこで、税関による監督管理ルールと製造業に対して行なわれている査察現状を踏まえて、この2つの費用に関して、税関が課税を判断する基準、企業でよく見られる認識の誤り、企業の対応策までを下記にまとめます。
1. 税関による価格審査時の核となるルール:「契約上の名称ではなく、取引の実質で判定する」
実務において多くの企業では、契約上で「技術サービス費」と記載されていれば、税関への課税申告をしなくてよいと単純に捉えている。しかし、「中華人民共和国税関輸出入貨物課税価格審査弁法」(税関総署令第213号)によれば、税関による課税価格審査は契約上の名称に依拠するのではなく、費用と輸入貨物の間の関連関係を中心に確認される。以下の2つの要件に同時に該当する特許権使用料の場合は、その全額を課税価格に算入する必要がある。
要件①「直接関連性」:
費用が、企業の輸入する原材料、部品、完成品と直接対応関係があり、輸入貨物の生産、使用、販売に供されている。
要件②「前提条件性」:
費用の支払いが、国外サプライヤーによる供給、または生産許諾の前提条件となっている。すなわち、費用を支払わなければ、また技術許諾を取得しなければ、企業が対応する輸入貨物を調達できないという関係が存在している。
2. 税関による課税か非課税かの判断方法
税関が課税対象の特許権使用料に該当するかどうかの判断をどう行っているのか、その判断方法を簡単に示すと以下のように言える。
課税対象となる特許権使用料:
国外から購入する特許、生産工程、技術図面、金型配合といった知的財産権の使用権であり、
かつ、その知的財産権が輸入されるカスタム部品に附帯している。
課税対象とならない技術サービス費:
国外から派遣されたエンジニアが提供する現場調整、設備運用保守、従業員研修、アフターサービス等を対象とする費用。純粋な労務の性質を有するもので、知的財産権の許諾移転を伴わないもの。
【判断事例】
課税された事例:技術費用を一括計上し、特許権使用料と認定され全額追徴されたケース
企業Aは、長期にわたり国外からコア部品を輸入し、中国国内における完成品売上高の一定割合を「技術サービス費」として国外の親会社に支払っていた。契約上では、国外側が専用生産工程、製品設計図面、生産標準を提供すると明確に定められていた。税関査察において、この費用は名目上は技術サービス費とされているものの、その実質は専有技術に係る特許権使用料であると認定された。また、その費用の支払いは企業が特注で輸入部品を調達し、製品を合法的に生産するための必要前提条件となっており、課税価格へ算入すべき要件を完全に満たしていると判断された。最終的に、過去3年分の輸出入データまで遡られ、追徴税額および延滞金の合計は720万元余りとされた。
課税されなかった事例:純粋な労務としての技術サービスであるとされ税関課税が免除されたケース
企業Bは、生産用金型およびブランク材を輸入し、国外技術サービス契約を別途締結していた。サービスの費用は、国外技術者が中国に派遣された際の工数に基づき実費精算され、そのサービス内容は金型の設置、生産ラインの調整、設備故障の修理とされ、契約には知的財産権の授権、技術移転に関する条項は一切含まれていなかった。税関は、この費用は生産に付随する純粋な労務支出に該当し、輸入貨物の調達との間に強制的な拘束関係がなく、貨物輸入の前提条件には当たらないと判断した。そのため、輸入課税価格に算入して税額を計算する必要はないとされた。
3. 企業によく見られる認識間違い
契約上の名称だけに基づいた性質判断
契約上の名称だけで費用の性質を判断している。税関による監督管理では、形式性よりも実質性が優先されており、費用に知的財産権の授権が含まれていて、輸入調達の前提条件となっている場合、サービス費、コンサルティング費といった名称であっても、課税対象となる特許権使用料として認定される。
税務局と税関の徴収管理体系の混同
税務局と税関はそれぞれ独立した徴収管理体系を構築している。企業が源泉所得税を納付していても、それは税務局面のコンプライアンス義務を完了したにすぎず、税関における輸入段階でかかる税金/費用の申告責任がなくなるわけではない。
従来から輸入している部材であれば免除されるという誤解
一部の企業は、長期に渡って輸入している継続的な特注部材については、技術費用に関するリスクはないと認識してしまっている。しかし実際には、国外の特許や専用工程に基づいて生産される特注部材について、そこに付随する技術費用は長期に渡って税関査察の重点対象とされている。新たな部材なのか、すでに長期に輸入している部材なのかで扱いが変わるというルールはない。
4. 企業の対応に関する提案:コンプライアンス是正と自主申告 - 長期的な防御体制の構築
上述したよく見られるコンプライアンスリスクに対して、企業においては以下のような措置を採ることで特許権使用料の申告リスクを回避することが望まれる。
契約類型を分離する
知的財産権の授権、技術許諾と現場労務サービスについて契約を分けて締結し、それぞれ独立して価格を設定した上で、対外送金および文書保管も分けて行う。内容が混同した取引を避けることで、全額が課税対象と推定されるリスクを回避する。
決済方式を規範化する
技術授権費用は輸入貨物価格に基づいて計算し、労務サービス費は工数に基づいて実費精算する。完成品の売上高の一定割合に基づいて計上する形式を避け、税関面の税関連リスクを低減する。
既存リスクを処理する
直近3年間において適正に申告されていなかった特許権使用料については、税関の自主申告制度を活用して自己チェックおよび追加申告を行い、行政処罰の免除、企業の税関信用ランクの維持に努める。
申告段階を規範化する
税関の申告規範を厳格に遵守して、通関申告書の特許権使用料に関連する欄を事実どおり記入する。これにより前段階でのリスク管理を実現し、事後査察の潜在リスクを防止する。

