【中国雑感コラム】製造業の生産拠点の中国回帰は

作者:TJCC日付:2021-09-30 10:24:00

中国雑感コラム「製造業の生産拠点の中国回帰は」

昨年からのコロナ禍において中国の日系製造業の一部は、日本国内回帰やベトナムなど東南アジアへの生産移管を進めた。日本の多くのメディアでは中国からの撤退、事業縮小があたかも進んでいるかのような偏った見方が目についた。その背景としては「マスク」に代表されるように、中国に100%生産源をもった場合に製品が入ってこないという事態に対応すること、さらに日本政府が昨年4月、新型コロナウイルス感染症拡大に対する緊急経済対策として海外生産拠点の国内回帰およびASEANなどへの生産拠点多元化を支援する補助金支給策を発表したことなどが要因と考えられる。

しかしながら、世界でいち早く新型コロナを収束させ、唯一プラス成長を続ける経済大国である中国からの撤退はありえず、むしろ一部企業では再び中国に生産拠点を戻す動きが出てきていることは、日本ではほとんど報道されていない。(日本のメディアは従来から中国にとってポジティブな報道に何故か消極的である)

必要なことは、生産拠点や調達先を分散させることによってリスクヘッジを図るということだろう。弊社の顧客企業でも、ベトナムやタイに一部生産移管したものの、現地における新型コロナ感染拡大に伴い再び中国に移管する動きが出ており、そのサポートも行っている。

中国に生産を移管させる際には、いくつかのハードルがあり、1つは移管元からの中古設備の輸入が厳しく管理されている(輸入可否判定や「CCIC:中国検験認証集団」の船積み前検査など)。また設備を輸入できたとしても、生産拡大のためのワーカーの確保や、日本からの技術者派遣も非常に困難な状況にある。(現在、入国のためのビザ取得に際して招聘状が必要であるが、多くの場合は政府関連部門から認められない実情がある)

米中対立が激しさを増している現在、日本は日中関係の改善をより進めることが期待されており、その結果として日本企業は中国ビジネス展開の大きなチャンスを迎えることができるであろう。(NT)

 

 TJCCコンサルティンググループ 田辺尚裕