【中国雑感コラム】鉄道の安全性

作者:TJCC日付:2021-12-24 10:46:00

中国雑感コラム「鉄道の安全性」

最近、日本では電車に危険物を持ち込み「凶行」に及ぶ事件が後を絶たない。今年10月の京王線特急の乗客刺傷事件では、刃物のほか、可燃性の殺虫スプレーや大量のライターオイルまで持ち込まれていた。海外の鉄道では危険物持ち込みによるテロや事件防止のために「手荷物検査」を実施しているが、過密ダイヤの日本の都市部の鉄道では、利便性などの観点から全面導入には踏み切れていない。

日本の鉄道では、可燃物の持込みは禁止されている。きっかけとなったのは2015年、走行中の東海道新幹線車内でガソリンを持ち込んだ男が焼身自殺を図り、女性客が巻き込まれて死亡した事件だ。事件を受け、JRや私鉄各社は可燃性液体の車内持ち込みを禁止としたが、手荷物検査がないため、事実上「フリーパス状態」が続いている。鉄道会社側は、駅員の巡回や車内状況を捉える防犯カメラを設置するなどの対応を強化しているというものの、今年8月にも小田急線車内で男が刃物で乗客10人に重軽傷を負わせる事件があるなど、いっこうに危険物の「フリーパス状態」は解消されていない。

日本の報道を見ていると、前述の如く都市部は過密ダイヤで利用客も多く、全員に対する検査実施は無理だという論調である。一方中国では、新幹線をはじめとした鉄道や地下鉄において、全乗客に対する手荷物検査が実施されており、新幹線にいたっては身分証の提示も必要であり、高い安全性の確保を図っている。上海の地下鉄の朝夕のラッシュ状況を見ると東京と変わらないか、むしろ東京以上の混雑状況にもかかわらず、トラブルもなく整然と進んでいるではないか。

日本の鉄道の“安全神話”が崩壊した現在、乗客の安全確保を最優先に考え、多少利便性を犠牲にしてでも全面手荷物検査を実施すべきであるが、日本政府や鉄道事業者にやる気がないとしか思えてならない。(NT)

 

TJCCコンサルティンググループ 田辺尚裕